フリーランス移住者が直面したネット環境の壁と自治体コワーキングスペース活用のリアル
地方移住を検討されているフリーランスの皆様、こんにちは。「みんなの移住支援活用レポ」をご覧いただきありがとうございます。
Webデザイナーとして都内で活動していましたが、地方での暮らしに憧れ、数年前に家族とともに自然豊かな地方都市へ移住いたしました。移住前は仕事の性質上、インターネット環境と作業スペースの確保が最も重要な課題であると考えており、十分な下調べをしたつもりでした。しかし、実際に移住してみると、事前に想定しきれなかった多くの壁に直面し、自治体のサポートを駆使しながら課題を乗り越えていった経験があります。
本記事では、地方移住したフリーランスが実際に遭遇したインターネット環境の課題や、自治体が提供するコワーキングスペースをどのように活用し、どのような成果や失敗があったのかを具体的な体験談としてご紹介いたします。移住を検討されている皆様にとって、リアルな情報と対策の一助となれば幸いです。
移住前の情報収集と期待
私は移住先を選ぶ際、まずインターネット環境の整備状況を重視しました。Webデザイナーという職種柄、大容量データの送受信やオンラインミーティングは日常茶飯事であり、安定した高速回線は必須条件だったからです。自治体のウェブサイトや地域の移住支援担当者への問い合わせを通じて、候補地では光回線の提供エリアが拡大していること、また自治体が運営するコワーキングスペースがあることを確認しました。
当時の私は、「光回線が利用できるなら大丈夫だろう」「コワーキングスペースがあれば、気分転換や交流の場にもなるだろう」と楽観的に考えていました。移住支援担当者からは「光回線はほとんどの地域で導入されていますし、コワーキングスペースも充実していますよ」と説明を受け、安心感を抱いていたものです。
移住直後の現実:期待と現実のギャップ
しかし、移住してすぐ、私は最初の壁にぶつかりました。引っ越し先で光回線の導入工事を申し込んだところ、想定外の事態が発生したのです。
【失敗談】光回線工事の遅延と不安定な仮回線 移住先の住宅は築年数がやや古く、光回線の引き込みには追加工事が必要であることが判明しました。事前に確認したはずでしたが、個別の住宅状況までは把握できていなかったのです。結果として、工事完了まで2ヶ月近く待たされることになりました。その間、モバイルWi-Fiルーターで凌ぐことになったのですが、都心と比べて通信速度が遅く、時間帯によっては非常に不安定になることがありました。特にオンラインミーティング中に音声が途切れたり、画面共有がフリーズしたりすることは日常茶飯事となり、クライアントにご迷惑をおかけすることも少なくありませんでした。
この経験から、光回線の提供エリアだけでなく、個別の住宅への引き込み状況や工事期間まで、事前に詳細に確認することの重要性を痛感いたしました。もし可能であれば、短期間でも良いのでお試し移住制度などを利用して、実際に滞在しながらインターネット環境をテストすることをお勧めいたします。
自治体コワーキングスペースの発見と活用
自宅のインターネット環境が不安定な中、私は事前に調べていた自治体運営のコワーキングスペースの利用を開始しました。
【自治体サポートの具体例】〇〇市地域交流センター「つながるラボ」 私が利用したのは、〇〇市が運営する「つながるラボ」というコワーキングスペースです。ここは移住者支援の一環として開設されており、月額利用料は2,000円と非常に安価でした。利用には身分証明書と市への転入手続きを証明する書類の提出が必要でしたが、手続き自体はスムーズでした。
活用プロセスとメリット: * 安定した高速回線: 「つながるラボ」は自治体施設内にあり、専用の高速光回線が整備されていたため、自宅のモバイルWi-Fiとは比較にならないほど快適なインターネット環境で仕事ができました。これがなければ、仕事の納期遅延や質の低下は避けられなかったでしょう。 * 集中できる環境: 自宅では誘惑が多く集中しにくいことがありましたが、他の利用者も仕事をしているため、自然と集中できる環境でした。 * 地域情報と交流の機会: スペースには地域情報が掲示されており、イベント情報なども入手できました。また、常駐のコミュニティマネージャーがおり、移住者や地域住民、他のフリーランスとの交流をサポートしてくれました。実際に、この場所で知り合った地域の方から、イベントのウェブサイト作成の依頼をいただいたこともあります。
【失敗談】コワーキングスペース利用の落とし穴 一方で、コワーキングスペースの利用にはいくつかの課題もありました。
- 利用時間の制限: 「つながるラボ」は平日の9時から18時までの開館でした。都内で夜間や休日も働くことがあった私にとっては、急ぎの作業や納期前の追い込みに対応しにくいという制約がありました。
- オンラインミーティングの課題: 個室ブースは限られており、常に空いているわけではありませんでした。オープンスペースでオンラインミーティングを行う際には、周囲への配慮が必要となり、機密性の高い内容を話すことには抵抗がありました。結局、重要なミーティングは自宅の不安定な回線で対応せざるを得ないこともありました。
- 設備不足: 大型モニターやプリンターなどの設備はありましたが、特定のソフトウェアやデザインツールに対応したPCなどはなく、完全に自分の作業環境を再現できるわけではありませんでした。
このように、自治体コワーキングスペースは大変有効なサポートではありましたが、万能ではありません。自分の働き方や必要な設備を具体的に洗い出し、利用条件や設備の詳細を事前に確認することが重要だと感じました。
自宅でのインターネット環境改善への再挑戦
「つながるラボ」を拠点としつつも、自宅での作業環境の改善は喫緊の課題でした。光回線工事が完了した後は、期待通りの高速かつ安定したインターネット環境を手に入れることができました。しかし、ここでも新たな学びがありました。
プロバイダ選びの難しさ: 地方移住では、地域の特定のプロバイダが強く、選択肢が限られるケースもあります。私の場合は、大手プロバイダと地域密着型のプロバイダがあり、料金体系やサポート体制が大きく異なりました。結局、サポートのきめ細かさを重視し、地域密着型プロバイダを選びましたが、契約プランによっては速度が出にくい場合があるといった情報も後から耳にしました。移住先のフリーランス仲間からは、通信障害の際に地域プロバイダの方が迅速に対応してくれた、という話も聞きましたので、何を重視するかによって選択肢が変わることを実感しました。
移住生活におけるその他のリアル:仕事と収入、地域コミュニティとの関係
インターネット環境と作業スペースの問題が解決した後も、フリーランスとしての移住生活には様々なリアルがありました。
- 仕事の確保と収入の変化: 移住直後は都内からのリモート案件が主でしたが、徐々に地域での繋がりも生まれ、地元企業からのウェブサイト制作やコンサルティングの依頼も増えました。コワーキングスペースでの出会いが、新たな仕事に繋がることもありました。収入面では、生活費が抑えられる一方で、都心部ほどの高単価案件は少ない傾向にあり、ポートフォリオを強化し、継続的に提案活動を行う必要性を感じています。
- 地域コミュニティと作業環境: コワーキングスペースは、単なる作業場所ではなく、地域の人々と交流する貴重な場となりました。お昼ご飯を一緒に食べたり、地域のイベント情報を共有したりすることで、地域への溶け込みがスムーズになったと感じています。特に、自治体職員の方々との交流は、地域の課題を知るきっかけにもなり、新たな事業アイデアが生まれることもありました。
まとめ:移住を検討するフリーランスへのアドバイス
地方移住とフリーランスとしての働き方を両立させるためには、インターネット環境と作業スペースの確保が非常に重要であると、私の体験を通じて改めて感じました。
- 事前確認の徹底: 光回線は「提供エリア」だけでなく、「個別の住宅への引き込み可能性」「工事期間」まで具体的に確認しましょう。可能であれば、お試し移住などで実際の環境をテストすることをお勧めします。
- 自治体コワーキングスペースの賢い活用: 料金が安価で安定した環境を提供してくれる自治体コワーキングスペースは、移住直後の強い味方となります。しかし、利用時間や設備、オンラインミーティング環境など、自分の働き方に合うかどうかの詳細な確認が必要です。期待しすぎず、メリットとデメリットを理解した上で活用しましょう。
- 複数の選択肢の検討: 自宅のネット環境、コワーキングスペース、カフェなど、複数の作業場所や回線確保の手段を検討し、リスク分散を図ることが賢明です。
- 情報収集と交流: 移住先の自治体ウェブサイトだけでなく、移住者コミュニティやSNS、実際に移住したフリーランスのブログなど、多様な情報源からリアルな情報を集めましょう。コワーキングスペースや地域のイベントを通じて、積極的に地域住民や他の移住者と交流することも、新たな仕事や生活のヒントを得る上で非常に有効です。
私の失敗談も含め、これらの経験が、地方移住を検討されているフリーランスの皆様にとって、具体的な準備と心構えの一助となれば幸いです。皆様の移住が、豊かで充実したものとなることを心より願っております。